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石臼碾き宇治抹茶


 尺径の石臼で宇治から取り寄せた碾茶を碾く。

 近年世界的「抹茶」ブームだそうで静岡でも抹茶の生産が伸びているらしい。急激な需要を満たすため あの手この手で技術革新が進んで材料用抹茶に特化した生産が盛んらしい。

 静岡茶の主流は「やぶきた」種を生み育て煎茶文化を育んできた。静岡県立美術館のある草薙に若かりし頃住んでいたことがある。その丘の一角に「やぶきた」発祥の地という石碑と古木がたっていた。八十八夜を迎える頃 静岡のあちこちで何とも言えぬ香しい新茶色の風が吹く。ここに生れた特典の一つが煎茶作りの香りに違いない。

 抹茶の名産地 宇治に行っても西尾に行っても自慢のお茶だと言って出された煎茶に感激したことがない。馴れ親しんだ静岡の煎茶がやはり美味しいと感じてしまう。しかし抹茶のジェラートを作ろうとした時、やはり宇治には敵わないと感じ 宇治から石臼を取り寄せ、碾茶を分けてもらってスタートした。

 碾茶とは茶葉から茎や葉脈を取除き石臼で微粉末にしやすいように葉の柔らかい部分だけを取り出した状態をいう。西尾のとある有名な抹茶問屋をお訪ねしたことがある。無菌室の部屋に無数の石臼が自動で回る壮観な景色に驚いた。とは言え、石臼で碾ける量は大量生産とはいいがたい。碾茶を作る工程も大変手間のかかる仕事らしい。それ故に昔から抹茶は高価で貴重なものとされてきた。ところが時代は移り、抹茶ブームに乗り遅れんと技術革新が進み以前では考えられなかった製造方法が生み出され量産しているが、需要に供給が追い付かないほどの状態と報道された。

 このブームに敏感に動いたのは静岡ばかりではなく中国の企業、生産団体、機械メーカー等々。日本の製茶機器メーカも彼らとの商談に鼻息が荒い。またとない商機に違いない。数台のバスに便乗した中国からの視察団は数年で中国が世界トップの生産国になると豪語してやまない。そもそもお茶を日本に伝えたのは我々だと。

 静岡の生産者は中国なんかに負けるわけがない、質が違うと鼻で笑い返すが、同じことを宇治の業者に思われているのではなかろうか。

 隆盛を誇った家電メーカーが中国、韓国に生産拠点を移し技術や研究者が流出し 今や国産家電メーカーがどのような苦境に陥ってしまったか、現実は厳しい。

 全てとは言わないが手を抜いた抹茶風味が静岡でも出回っている。ブームが去った時残されるのは何だろう。マスコミも視聴率重視しすぎて 刺激や風変りを追いかけ回し激辛、激盛り特集に明け暮れる。奇をてらう食文化がもてはやされる果てには いったい何が残るのだろう。うちは小さな子供から老人まで楽しんでもらえる、昔ながらの抹茶ジェラートを提供し続けたい。

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