臨時休業・怪我の功名

 臨時休業6日目、4,5日で歩けるようになるかという甘い期待は吹き飛んで不自由な生活を強いられている。明日仮ギブスから本ギブスに付け替えらしい。無理に動くと骨接ぎがずれて治りがさらに遅くなると脅されて仕事はお預け状態。長年の仕事依存症はかなり重症化しており、酒が切れて暴れだすアル中患者さながら仕事が切れて狂いだしそうだ。

10月5日(火)再開と希望数値は挙げたが、ちょっと台風16号の雲行き並みに怪しくなってきた。

店頭には臨時休業の貼り紙一つ。コロナで入院したとか,とうとう倒産したかと憶測を呼び連日恐る恐る中を覗きに来たりメールや電話をくれる仲間が多い。ほぼ自宅療養だが、たまに店にいると次々と訪問を受け、骨折の経緯をその度一から説明しなくてはいけない。だんだん話し上手になって講談師に変身した気分になる。

 そんな中には退屈を紛らわそうと読書を勧める上等な知り合いがいる。様子をうかがいに来て安心した勢いで、わざわざ家まで戻って一冊の本を持ってきてくれた。「定年オヤジ改造計画」垣谷美雨著がそれ。先回は自分の現在の心境を判ってほしいがために「徒然草」を読めと押し付けてきた。元高校の数学の教師だが彼のルーツがめちゃ面白い。大阪道頓堀を開掘した安井道頓。家康の囲碁家元の一人安井算哲。岡田准一、宮崎あおいが演じた「天地明察」の主人公、渋谷春海の血筋で彼の押入れのミカン箱の中からとてつもない資料が出てきた。こんな片田舎にそんな超一級の資料が存在するなんて最初は誰も疑ってかかったが大学教授や博物館学芸員が訪ねて来てみんな腰を抜かした。

大阪城近くの大阪歴史博物館で特別展示会や講演会が催され、ちゃっかり同席させてもらったことがある。おそれ多くも誰もが知る道頓堀の名前に由来する末裔であることが証明されたわけだが、相変わらず僕たち庶民とも対等に付合ってくれ、専門は数学だけれど時には歴史や漢文、英文の宿題も出してくれる。山積みの歴史資料や書籍の感想文提出は面倒くさいけれど、まあ楽しいといえば楽しい。学生時代サボった分の補習授業と思えば有難い。


今回の「定年オヤジ改造計画」表題からして怪しい。僕に何を諭したいのか、想像は薄っすらついたが読み始めると実に辛辣、反省せずにはいられない内容。自営業者で定年はないにしろ主人公と重なる部分が多く冷や汗が出た。怪我しなければ一生遭遇しなかっただろう読書体験に怪我の功名と感謝したい。

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