新茶の季節になりました
八十八夜を過ぎて新茶の香りが茶処袋井の街を漂い始めました。 掛川や森町といった昔からお茶に特化した宣伝広告を重ねてきた街に囲まれて、全国的な知名度は高くないものの気候風土に恵まれ美味しいお茶が採れることにさしたる差はありません。 この街に《ひしだい製茶》という茶問屋が歴史を重ねて在ります。今ではどこにでも見かけるようになった「抹茶入り玄米茶」はここが発祥元と伝わっています。 全国的には「ひしだいの炭火ほうじ茶」として大変有名なのですが、あまりほうじ茶を飲む地域でないため残念ながらその価値に気づいている地元市民は少ないのです。
「全国茶審査技術競技大会」という茶業界のオリンピックのような権威ある選考会があります。その厳しい審査で認められ優勝したものだけに与えられる「茶師10段」という誉れ高い称号があり2020年の時点では日本にたった15人しか存在しないのだそうです。その内の一人「田中祥文氏」がこの《ひしだい製茶》で製茶に携わっているのです。びっくりですね。得てしてこういう優秀な人物は、こういうことをひけらかしたり自慢したりしない謙虚な人物が多く、彼もやはりその一人で、もっと市民が我が事のように誇りと感じていいはずなのに、知る人ぞ知る埋もれたままにされているのです。 彼が監修した新茶があるので今年はそのお茶を使った新茶ジェラートを作ってみました。このお茶のコンセプトは買い求めやすい値段(¥1000/100g)で旬の味覚をたくさんの人に楽しんでもらいたい。特に女性におすすめのブレンドが施されているそうです。
「ひしだいの炭火ほうじ茶」も彼の監修で作られており10種類以上のこだわりの銘柄が在ります。当店で出している「ほうじ茶ジェラート」もそのうちの一つで作ります。東京で焙じ茶ジェラートが有名なショップを紹介されこっそり試食に出かけたことがありましたが、たぶん安いほうじ茶粉末を入れた苦いだけのチョコレート色のジェラートでびっくり、がっかりしたことがあります。おいしい焙じ茶を飲んだことがないんだろうなと気の毒に思う反面、これを焙じ茶と思い込んでしまう消費者がもっとかわいそうだと思ったのです。 「やぶ北」を主体にした「煎茶」では日本一と胸張る静岡ですが、「抹茶」に関しては歴史ある宇治や少し新しい西尾の農家や問屋さんからすれば歴史の浅い静岡の抹茶はまだまだ競争相手ではないと軽んじられています。しかし、従来のお薄やお濃茶として茶道文化をベースにした目的ではなく、庶民相手のお菓子や抹茶ラテ、ジェラートなどの食素材として使うとなれば現代の刺激を求めがちな世代には、かえって苦いくらいの静岡の加工用抹茶の方が、値段も10倍近く差があるし甘みを砂糖で調整できるので向いているのかもしれません。
今や中国が敏感に反応し、静岡に大挙して茶園、茶工場、製茶機械メーカーを巡る視察ツアーを仕立て、逆に商機とばかり日本の機械メーカーや農場主、問屋は中国で商売を始めている。元々お茶は中国発祥だから数年後には中国の抹茶が世界を席巻すると中国のブローカーは豪語しているようです。日本の有名産地が新米の静岡抹茶をせせら笑うと同じように、ちょっと先行く静岡が中国相手に負けるはずがないと先輩面する。すぐ逆転されるだろう予想は他の多くの事例が教えてくれているのだけれど。
ペット茶が日本中を席巻するとは、かつての茶業界では思いもよらぬ展開。あんなもんお茶じゃないと小ばかにしていた諸先輩たちが世を去り四半世紀。だれがこのような変化を予想できたでしょう。
コンビニがスーパーマーケットに取って代わり、薬局がドラッグストアさらなる変化を遂げつつ成長している。コロナ禍でさらに目まぐるしい変化に巻き込まれ過去の価値観に固執していては生き延びられない。かといって本物が合成に入替るのも寂しい。いいものを残しつつ、囚われない柔軟さを身に着けなければいけない。
ここまで書いて大問題発覚!
今日は昨日までの「炭火ほうじ茶ミルク」から「アールグレー紅茶ミルク」にメニューを切り替えたのに、スタッフ間の連絡がどう間違ったか 紅茶をほうじ茶で出してしまったことに閉店後気づいた。
ほうじ茶頼んだに紅茶食べさせられたお客はどう反応しただろう? この店のほうじ茶、変な味。コロナで味覚が変になったかも?。
発覚したのは終了時、スタッフさん「私 最近ここのほうじ茶にはまっていて、今日もおいしい」の一言。僕「えっ 今日はほうじ茶出してないよ。紅茶作ったはずだけど。」・・・「えええっ!!?」
「炭火ほうじ茶ミルク」頼んだのに 「アールグレー紅茶」食べさせられちゃったお客さんごめんなさい。
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